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肩こりと漢方薬

厚生労働省の国民健康基礎調査(2013年)では肩こりは有訴率で女性の1位、男性の3位となっています。患者さんにお話を詳しく聞くと多くのかたが肩が凝っていると訴えておられます。 さまざまな原因が肩こりを起こします。まず、クモ膜出血、心筋梗塞、胆嚢疾患、呼吸器疾患、リウマチ性多発筋痛症などがないかどうかを診察します。 更に頚椎の異常などによる痛み痺れなどを調べ、ない場合は頚部周りの筋肉の異常と診断します。症状により筋肉を緩めたり、痛みを止めるための注射、内服薬を処方します。ハップ剤を使うこともあります。 漢方薬では首筋の緊張を目標に葛根湯(かっこんとう)、葛根加朮附湯(かっこんかじゅつぶとう)などを処方することが多いです。女性の場合は女性ホルモンのアンバランスから起こることも多く、その場合は更年期症候群や、月経関連障害に頻用される当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)などを処方します。 次回は11月15日頃の更新予定です

腹痛と漢方薬

腹痛は家庭にある置き薬の胃薬や整腸剤などで軽快するものから、緊急手術が必要なものまであります。自分で判断することが難しい場合もあります。嘔吐、下痢、熱発をともなったり、痛みが激しいものは医療機関を受診して診察をしてもらいましょう。  腹痛は女性ならまず妊娠、婦人科疾患を考えます。それが当てはまらない場合や男性では、イレウス、急性虫垂炎、消化管尖孔、腹部動脉破裂炎などの緊急の外科手術が必要なもの、心筋梗塞、糖尿病性ケトアシドーシスなど生死に関わるもの、腎結石、胆石痛、嘔吐や下痢が激しく処置が必要な疾患でないかを診断します。  軽症の吐き下し(感染性胃腸炎)や、緊急性のない内科的腹痛は漢方薬治療の適応となります。  臍(へそ)から上の腹痛には安中散(あんちゅうさん)、柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)、四逆散(しぎゃくさん)など,臍から下の腹痛には、桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)、大建中湯(だいけんちゅうとう)など、痙攣性の痛みには芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)などを処方します。  婦人科の痛みには当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、桃核承気湯(とうかくじょうきとう)、当帰建中湯(とうきけんちゅうとう)、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)などを処方します。           次回の更新は10月15日を予定しています

下痢と漢方薬

立秋も過ぎて秋の気配を感じ始めるころは、夏の暑さで体調の不良を訴え始める時期でもあります。この頃から診療所には下痢を訴える人が増えてきます。秋は漢方の五行説で言うと肺、大腸の働きを上げる季節なのですが、体力が衰えていると逆に肺、大腸の症状が出てくることがあるのです。  下痢症は西洋医学的には24時間に200g以上の頻回の軟便あるいは水様便を出している状態です。90%くらいはウイルス、細菌の感染症で起こります。残り10%くらいは炎症性腸疾患、過敏性腸症候群などの器質的、機能的疾患です。  下痢には漢方薬が効果的です。おなかに熱を持っている場合、黄ごん湯(おうごんとう)、半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)などを、冷えている場合に真武湯(しんぶとう)、人参湯(にんじんとう)などを処方します。その他、非感染性の下痢に、白頭翁湯(はくとうおうとう)、桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)などを処方します。おなかに熱を持っている場合は数日で軽快する場合がありますが、多くの場合数週間から数ヶ月以上内服することが多いようです。 次回9月15日ころの更新予定です。

夏ばてと漢方薬

立春、立夏、立秋、立冬の前18日間の期間を土用と呼びます。体感的には季節の真ん中という感じですが日照時間から見ると、気節の変わり目で体調が崩れやすい時期です。養生としては胃腸の働きを調節して次の季節に備える時期です。今年の夏の土用は7月20日から8月7日までです。夏の土用の時期は暑さで体調が落ちやすく、夏ばて予防、元気回復のために、ビタミンA群やB群の多い鰻を食べる習慣が江戸時代から行われています。
 高温多湿の夏は、汗のかきすぎで脱水になりやすく、クーラーで室温とが気温の差が大きくなり、自律神経のバランスが崩れます。更に冷たいものをとりすぎてで胃腸が冷えます。これらはいずれも疲労感・食欲不振を引き起こし夏ばての原因となります。
 夏ばてにはまず補中益気湯(ほちゅうえっきとう)を処方します。胃腸を補い気持ちを引き上げる効果があります。即効性があります。長く暑さが続くと清暑益気湯(せいしょえっきとう)の適応が多くなります。この処方も胃腸の働きを調節し元気を回復する作用があります。次回は8月16日ごろに更新予定です。

胸痛と漢方薬

一般外来の3%弱のかたが胸が痛いと訴えられます。怪我が原因出なければ、まず心臓や大血管からの痛みがどうかを診断します。次に肺、上部消化器(食道、胃、十二指腸、胆嚢、膵臓など)、筋骨格神経系疾患、乳房の疾患かどうかを診断し、そうでなければうつ病などを考えます。激しい痛みや全身状態が悪い場合は、まずかかりつけ医か救急病院で見てもらいましょう。心電図、胸のエックス線写真、採血、血管造影、CTなどの検査をします。  これらの病気のうちで胃炎、逆流性食道炎、肋間神経痛などの痛みで胃酸の分泌を抑える薬や鎮痛剤で症状が取りきれない場合に漢方薬が良い適用になります。胃炎、逆流性食道炎の場合、茯苓飲(ぶくりょういん)、安中散(あんちゅうさん)、四逆散(しぎゃくさん)、平胃散(へいいさん)などが、肋間神経痛には桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)、当帰湯(とうきとう)などを処方します。 次回は7月15日更新予定です。

頭痛と漢方薬

頭痛とは頭蓋の内外の動静脈・組織、脳脊髄神経、頭・首筋の筋肉の痛み受容体に加えられた刺激を脳が痛みとして感じたものです。原因不明のものと原因がはっきりしているものに分けられます。  原因不明の頭痛には片頭痛、緊張性頭痛、群発頭痛などがありスマトリプタン、ボルタレンなどの薬が使われます。原因のはっきりした頭痛はしっかり調べてその治療を行います。中でも脳血管疾患、脳内感染症、脳腫瘍、緑内障、側頭動脈炎(巨細胞性動脈炎)はほうっておくと命にかかわったり失明することがあります。  漢方薬では片頭痛には呉茱萸湯(ごしゅゆとう)、清上けん痛湯(せいじょうけんつうとう)など、緊張性頭痛には、葛根湯(かっこんとう)、葛根加朮附湯(かっこんかじゅつぶとう)、風邪によるものには麻黄湯(まおうとう)、川きゅう茶調散(せんきゅうちゃちょうさん)など、天気不良の頭痛では五苓散(ごれいさん)などを使います。 次回は6月16日頃更新予定です

腰痛と漢方薬 その1

人は一生のうちに80%以上が腰痛をおこすといわれています。明らかな発症の原因や時期を覚えているようなぎっくり腰(急性腰痛症)は安静にしているとよくなることがありますが、痛みが3ヶ月以上続く慢性腰痛はかかりつけの先生に相談したり、整形外科を受診して原因を調べて治療することが必要です。原因としては打撲などの外傷によるもの、帯状疱疹などの皮膚疾患、筋肉・骨・脊髄の異常などの整形外科疾患、まれですが腎臓,胆嚢、膵臓、十二指腸、大動脈などの内臓疾患によっても起こります。漢方薬は急性、慢性期共に用いられます。打撲の場合は治打撲一方(ぢだぼくいっぽう)を処方します。急性腰痛では、筋肉の痛みには、よく苡仁湯(よくいにんとう)杏よく甘湯(まきょうよくかんとう)などを、神経の痛みや冷えがある場合、甘草附子湯(かんぞうぶしとう)桂枝附子湯(けいしぶしとう)などを処方します。慢性の痛みで冷えがある場合は桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)、牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)などを処方します。漢方治療で効果のない場合は西洋医学的な精密検査をするようにお勧めしています。 次回は5月15日更新予定です