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腰痛と漢方薬 その1

人は一生のうちに 80 %以上が腰痛をおこすといわれています。明らかな発症の原因や時期を覚えているようなぎっくり腰(急性腰痛症)は安静にしているとよくなることがありますが、痛みが 3 ヶ月以上続く慢性腰痛はかかりつけの先生に相談したり、整形外科を受診して原因を調べて治療することが必要です。原因としては打撲などの外傷によるもの、帯状疱疹などの皮膚疾患、筋肉・骨・脊髄の異常などの整形外科疾患、まれですが腎臓 , 胆嚢、膵臓、十二指腸、大動脈などの内臓疾患によっても起こります。漢方薬は急性、慢性期共に用いられます。打撲の場合は治打撲一方(ぢだぼくいっぽう)を処方します。急 性腰痛では、筋肉の痛みには、よく苡仁湯(よくいにんとう) 杏よく甘湯(まきょうよくかんとう)など を、神経の痛みや冷えがある場合、甘草附子湯(かんぞうぶしとう)桂枝附子湯(けいしぶしとう)などを処方します。慢性の痛みで冷えがある場合は桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)、牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)などを処方します。漢方治療で効果のない場合は西洋医学的な精密検査をするようにお勧めしています。 次回は5月15日更新予定です

便秘と漢方薬

 漢方治療を求める方に便秘で困っている人は多いと思います。特に女性は詳しく話を伺うと半分以上の方が便秘を訴えられます。  便秘はまず、それが大腸癌やイレウスのように腸を閉塞していて手術が必要なものか、腸がふさがっていなくても腸の炎症やや胆石症などの内臓疾患、ホルモンや電解質異常、腸を動きにくくする薬の内服などがないかを調べて原因があればその治療をすることが大切です。それらの原因がない機能性便秘は西洋薬では、酸化マグネシウムなどの機械的下剤、ヒマシ油、センナ、ビコスルファートナトリウム水和物などの刺激性下剤、その他腸腺分泌促進剤などを使います。  機能性便秘は漢方の出番が多い疾患の一つです。大腸の働きで弛緩型、直腸型、痙攣型に分けて、弛緩型では 大建中湯 (だいけんちゅうとう)、 補中益気湯 (ほちゅうえっきとう)などを、直腸型では 大黄甘草湯 (だいおうかんぞうとう)、 麻子仁丸 (ましにんがん)など、痙攣型では 桂枝加芍薬大黄湯 (けいしかしゃくやくだいおうとう)などを使うと効果があります。女性ではホルモンバランスを整え骨盤のうっ血(お血)を治すだけで便秘がよくなることもあります。もちろん生活習慣改善として繊維質の多い食事をとり運動を心がけてください。 次回4月15日更新予定です。

めまいと漢方薬

 めまいは、回転性めまい、浮遊感、失神、痙攣のいずれかにわけられます。回転性めまい、浮遊感は神経系、循環系に異常があることが多く、まれに自律神経障害、更年期障害などの全身性疾患があります。神経系は内耳、前庭に原因がある末梢性と脳幹、小脳に原因がある中枢性のものがあります。循環系では不整脈、高血圧、急性大動脈解離、完全房室ブロックなどがあります。耳鳴、難聴、頭痛、胸痛、手足のしびれ、麻痺などの症状に注意して耳鼻科、脳外科、循環器科などで原因を調べる必要があります。失神、痙攣は循環器内科、神経内科で精査してもらいましょう。  原因療法とともに、吐き気止め、抗めまい薬を使って治療します。末梢性でもっとも頻度が多い良性発作性頭位めまいはEpley法で耳石を治めることもします。  漢方治療では沢瀉湯(たくしゃとう)が第一選択薬です。この処方はエキス剤にはありませんが、沢瀉(たくしゃ)、白朮(びゃくじゅつ)の2味からなる処方で、生薬を処方してもらえば簡単に作ることができます。2000年ほど前に編纂された金匱要略(きんきようりゃく)に載っている処方で「胸部からみぞおちに水分が滞っていて頭にかぶるようなめまいをする場合に使う」(意訳)と書かれています。回転性めまい、浮遊感の両方に使います。他に立ちくらみがメインの時は苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)を処方します。浮遊感が中心の時に真武湯(しんぶとう)が卓効することがあります。次回3月20日更新予定です。

スギ花粉症と漢方薬

 インフルエンザは今も流行しています。学級閉鎖の小中学校もまだあるようです。手洗いと咽の乾燥予防が大切です。  松山では椿さんも終わりこれから暖かくなってきます。当院にも2月のはじめくらいから天気の良い日は、鼻がむずがゆく、くしゃみが出る人が診察にこられ始めました。スギ花粉症の始まりです。6人に1人が罹っているといわれる国民病です。杉花粉に感作されている人の鼻粘膜に花粉がくっつくとアレルギー反応を起こす病気です。現在はよいアレルギー薬ができて、1日1回か2回内服すると症状をかなり抑えられます。舌下にスギのエキスを含ませてスギの花粉にまけないようにする方法や、鼻粘膜自体をレーザーで焼ききる方法もあります。  漢方薬も効果があります。小青竜湯(しょうせいりゅうとう)や葛根湯加川きゅう辛夷(かっこんとうかせんきゅうしんい)、麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)のように発散させる薬方や苓甘姜味辛夏仁湯(りょうかんきょうみしんげにんとう)などのように水分をさばいてしまうお薬が効果的です。漢方薬でも充分な効果が得られないときは抗アレルギー剤を併用しますが多くの場合少なくてすみます。漢方薬は眠くならないの一番の利点です。 次回3月1日に更新予定です。

インフルエンザなどの感染症の後の咳

インフルエンザの流行が続いています。 インフルエンザは診断がつけば内服薬(タミフル、ゾフルーザ)、吸入薬(イナビル、リレンザ)、注射薬(アピアクタ)などの抗ウイルス剤で早く症状が取れるようになりました。しかしこじれてしまったり、自己判断で治療を中断したりして、治療が充分に行われていない場合には熱や痛みが取れても咳(とくに空咳)が続くことがあります。感染後咳といいます。抗生物質やステロイド内服・吸入をするとよくなることが多いですが、漢方薬がお勧めです。当院では五虎湯(ごことう)、麻杏甘石湯(ま きょうかんせきとう)をベースに柴朴湯(さいぼくとう)、小柴胡湯(しょうさいことう)などを組み合わせて治療しています。多くは1週間くらいで症状が半減し、2、3週間くらいでほぼ回復していきます。お年寄りや虚弱者で五虎湯、麻杏甘石湯が胃にこたえて飲めない人は、麦門冬湯(ばくもんどうとう)や桂枝加厚朴杏仁湯(けいしかこうぼくきょうにんとう)などを内服してもらっています。 次回2月14日更新の予定です

エアコン咳

7月の終わりくらいから咳が出始めて止まらないと訴える方が受診するようになりました。 多くの人がアレルギー体質で風邪をきっかけに咳が出始めたと訴えています。エアコンのダストを吸っているうちにほこりに感作され、ウイルスの感染をきっかけにアレルギー性の咳が出始めたと考えています。 当院では風邪の治療をまず行ってからアレルギー咳の漢方薬を処方しています。腎を調節する 五虎湯(ごことう)、神秘湯(しんぴとう)、脾を調節する麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう)を中心に治療します。効果は数日で出ますが、治るまでには3週間から4週間かかることがほとんどです。

認知症と天王補心丹

天王補心丹(てんのうほしんたん) 中年以後老年期の男女の初期の健忘の治療に使われてきた処方の一つです。 1600年頃に作られた処方で中国古典の『万病回春4巻・健忘』に載っています。 原典「心をやすんじ、神を保ち、血を益し、精を固くし、力を壮んにし、志を強くし、 人をして忘れざらしめ、 征忡(せいちゅう:動悸の一種)を除き、驚悸を定め、三焦(漢方の臓腑の一つ)を清し、痰涎を化し、煩熱をさり、咽乾を療し、心身を養育す。」 構成(黙堂柴田良治処方集):人参3g、五味子3g、当帰4g、天門冬4g、麦門冬6g、柏子仁3g、玄參2g、丹參3g、茯苓6g、桔梗3g、遠志2g、地黄4g  当院処方では以上の生薬を末とし蜂蜜で丸薬としています。1回2g・1日3回内服   適応(黙堂柴田良治処方集) 高血圧症 糖尿病 腎炎  健忘症  不安神経症 陰萎 強壮 強精 五臓の心(神志、理性、意識)が弱ったり不安定になったりしたときに使います。 当院では本年8月に入ってから処方をはじめました。まだ認知症の予防薬としての処方の経験はありませんが、使える可能性はあります。ご相談ください。